研究紹介
当研究室では,災害に対してレジリエントな建築物・都市を実現するための研究を行っています.ここでは,最近手掛けた(手掛けている)研究について紹介します.
計算科学的アプローチによる建築物・都市の防災計画に関する研究
建築物・都市で発生する災害の様相は,その時々の社会構造の影響を強く受けます.分かりやすい例は,少子・高齢化,あるいは人口減少に伴う変化です.人口減少に伴って管理が不十分な空き家が増えれば,災害が発生した場合の影響はより顕著に現れます.また,壮年人口が減少すれば,従来,地域コミュニティが暗黙のうちに担ってきた災害対応能力は低下します.社会構造が変化すれば,本来であれば建築物・都市の側にも相応の変化が必要ですが,物理的な都市空間の更新には長い時間を要するため,容易には対応できません.本研究では,このような「社会の変化速度」と「空間の更新速度」の間に生じる不整合に着目しています.この不整合によって増大する災害リスクを計算科学的アプローチにより定量的に評価・予測し,将来の社会構造に適応した防災方策を検討しています.
木造建築物のリスクベース防耐火設計法の開発
建築物の防耐火設計では,一般に,特定の火災シナリオの下での安全性を決定論的な方法で確認することで建築物の法適合性が検証されます.しかし,その建築物で発生が想定される火災の状況は,一つの火災シナリオの中で網羅しきれない様々な条件に左右されるため,火災シナリオを設定する場合には大きな安全代を確保せざるを得ません.特に木造建築物については,これまで仕様規定に基づいて設計が行われてきたこともあり,関連する議論が十分に深まっていません.そこで本研究では,火災安全性能を左右する各種不確実要因の影響を考慮したリスクベース防耐火設計法を開発することで,防耐火設計の合理化を図るための取り組みを進めています.
関連文献
- Himoto K. A risk-based design method for preventing fire spread between buildings to achieve a safety level equivalent to the prescriptive standard, Fire Safety Journal, Volume 162, 10479 (2026)
- 茶谷・樋本・村岡・中村・木本・蛇石・泉・安井・高橋・竹谷・糸井川・松山:内部構造を木質化した建築物の延焼防止性能検証− 事務所建築物に関するケーススタディ−, 日本建築学会技術報告集, 63号, pp.591-596 (2020)
- 樋本・糸井川・岩見:相対リスクに基づく建築物の延焼防止性能検証, 日本建築学会環境系論文集, 764号, pp.883-891 (2019)
大規模屋外火災による被害の抑止・低減に関する研究
2025年3月に大船渡市の山林で発生した火災は,多数の建物を巻き込み,過去に例を見ない大きな被害を出しました.こうした大規模屋外火災のリスクを定量的に評価することは,今後の対策を考える上で不可欠です.本研究では,市街地火災と林野火災を対象としてそれぞれ独自に開発されたモデルを統合することで,境界で発生する火災の延焼を物理的に予測する手法の開発を行っています.